夜の高知城ライトアップクラブ

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私と高知城               妻野 美緒様
私と高知城』               妻野 美緒様
※写真は、全て拡大できます。


白梅
 瀬戸大橋の向こうから来るその人は、とびきり背が高くてシャイ。
月に一度だけ逢える。
 「我儘でいいんだよ。」
 と私の躰を抱き寄せて言ったのは桂浜の夕暮れ。彼の茶色の革靴が愉快に砂を舞い上げている。いつか果てある河だということを忘れろよとでも言うように。時折、意地悪をして私の反応を楽しんだり、多くを聞こうとしなかったり、時間を然として捉えてる彼は大きくて不動。ささいな波に打ちひしがれさうな私をいつも包んでくれる。次は何処へ行こうかと、高知の名所を秘かに訪ねて、一年が経つ。次に逢うのは何日だろうか。頼りなさもまた、良きこと。
 互いの人生の流れの中で、ゆるやかに眺める季節の移ろひを、もう少し楽しんでいたいから、未だ行かないでいる「高知城」。天守閣めざして登る坂の背中は、私だけのとっておきの「お取り置き」。
 まだ見ぬ夢の為に、離れた時間をあたため合う私達の秘めた「恋」。

白梅白梅

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